本
4月からまともな本屋あるいは図書館に行けないのでは疑惑があるので,今のうちに読んでおきたい本を読むということをやろうとしている。
都甲幸治の『生き延びるための世界文学』を一つの指針にしようと思ったらこの中の本はほぼすべて未訳である。
しかし,ほんとに面白そうなものばかりである。特にジェームズ・ソルターは気になる(一番自分に合うであろうジュノ・ディアスは既読)。ジェームズ・ソルターの短篇「ヤシの庭」の一節はぐっとくる。
アーサーはノリーンのことをずっと考え続けた。彼女は僕のことを考えてるんだろうか? アーサーはよく思った。ほんの少しだけでも,彼女も僕と同じように感じているんだろうか? 何年経っても,何の変化もなかった。(都甲幸治前掲書,p223。訳は都甲幸治による)
この一節について,ずっと昔考えたことがある。もう何年か前にジェームズ・ソルターとは出会っていたような気分である。あの時は「グレート・ギャツビー」と自分を重ねてみたが,ギャツビーはアメリカの夢と自分とを重ねるような奴なので,根本的に自分とは違う(しかし,同じような境遇の友人にグレート・ギャツビーを勧めたし,別の友人は生真面目にグレート・ギャツビーを自分のものだと思い込んだ。彼らは今一体どうしてるのだろう)。ジェームズ・ソルターは果たしてどうだろうか。
しかし上述のように,紹介されている短篇集『最後の夜』は翻訳されていない(表題作の「最後の夜」のみ,岸本佐知子編『変愛小説集』所収)。
Amazonを検索してみても,どうやらジェームズ・ソルターの本はすべて未訳である。ペーパーバック版が軒並み高い中,Kindle版で少しお安くなっている「All that is」を見つけた。
しかしレビューの中に「100pまで読んだけど人多すぎてほんとわけわかんないよ」(超訳)というのを見つけたので,かなり躊躇。とりあえず『変愛小説集』で我慢しとくかね。
※都甲幸治が自身の読書歴を少し語っている。高校生のとき文学を読み始めて,日本では村上春樹に反応し,『風の歌を聴け』がいちばん好きと言っている。私も同じである。長篇では「風の歌を聴け」だけ,何度も何度も読み返すことができる。短篇は,「神の子どもたちはみな踊る」含め,何度も読むべきものがある。