ハウスオブカード②

ハウスオブカードを一気見した。その面白さを2点挙げる。

共感のできない友人であり師・フランク

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(I have no patience for useless things.)

 シーズン1の途中まではこう考えていた。

 フランクはいかれてるし,完全に共感できない悪である。でもそこが爽快だ,やっほーい!

 そう,ある意味で近年のディカプリオの「主人公だけど悪役」ぶり(特に「ウルフオブウォール・ストリート」)に通じるような爽快感を抱いていたのである。

 

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 しかし,フランクはもっと明確な死を作り出す。フランクは見ている者を突き放し,そしてまた何食わぬ顔で物語を作り出す(「ゴーンガール」に感じたものと一緒! あーやっちゃったよ!)

 それでもシーズン1の最後で視聴者をもう一度共犯者に仕立て上げてくれる。一生ついていく決心をさせてくれるのだった。視聴者への告白形式は,殺人をも許す形式なのである。告白は,告白者を許す制度であることが「ハウスオブカード」内でも触れられている。そう考えれば,フランクになぜか共感できてしまうのは視聴者への告白が唯一許されているからだ。

 

夫婦関係

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(クレア,ふつくしい

 シーズン1,シーズン2を通して緊張感を保つのは,アンダーウッド夫妻の夫婦関係だと考えてみよう。

 フランクの妻であるフランクの次に視聴者に近い位置にありながら,告白は許されていないクレア。シーズン1から貧困者・労働者⇔金持ち・権力者という構図を見せてくれたのは,クレアの場面だった。クリーンウォーターの古株を解雇,あるいは路上生活者に金を渡すも折り鶴にして返される,その折り鶴を練習する,土仕事などしたこともない…。

 クレアは典型的に嫌な金持ち・権力者である。しかし,そのことについて少し自覚的であるかもしれないし,そうではないかもしれないと思わせるところが面白い。しかし,アダムが金持ち・権力者じゃないクレアを象徴していたとすると,当然それは一時の迷い事に過ぎないのだろう。

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(アダム,イケメン…)

 しかし,結果そうであっても,その迷いを,クレアは視聴者と共有することができない。そのため,クレアが本当はどう思っているのかわからないところが,シーズン1では特に押し出され,とてもじゃないけど耐えられないような恐ろしい他者が家にいる(「ゴーンガール」じゃねえか)状態になっていた。

 フランクは彼女に妥協しながらも,常に自分の目標を達成することを描いている。クレアが「私の目標なんてどうでもいいと思ってるでしょ?」と言っても,口ではそんなことないと言いながら,どう思っているかわからない。実は,フランクは政治の話題は視聴者に教えてくれるが,夫婦の話題は教えてくれない。告白がないからこそ,夫婦関係については異常な緊張感が漂い,どうなんねん感が半端無かった。

まとめ

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 政治と夫婦の問題,あるいはサスペンスが並立して描かれ,それが複雑に絡まっていたシーズン2の初回までは,ほんとに完璧すぎて死ぬかと思った。特に,シーズン2の初回は出来すぎ。喜びすぎて,嘔吐しそうになった。"Welcome back."ってちょういい。そう,あなたに話しかけられるの待ってました!

 眠たい中見たせいか,シーズン2はシーズン1ほどではなかった(僕の興奮度合い)。多分,夫婦が一枚岩になっているような気がしたのもあったのかもしれない。シーズン3では,再び夫婦関係に火がついてほしいと願うばかり。